国から学術・芸術・スポーツの功労者に授与される2011年度の「紫綬褒章」を、本学会会員の三枝昂之氏が受章されました。
三枝氏は、2010年には第59回神奈川文化賞、2009年には『啄木ーふるさとの空遠みかも』により第32回現代短歌大賞を受賞されています。
三枝氏から受章のお言葉をいただきましたのでご紹介いたします。
受章に思うこと 三枝昂之 7月5日の学会夏のセミナーで紫綬褒章受章を祝っていただき、ありがとうございました。突然でしたのでみなさんのご厚意が一層身に沁みました。 受章は歌集11冊となった作歌活動も考慮されたのでしょうが、『昭和短歌の精神史』から『啄木ーふるさとの空遠みかも』へと続く短歌論考への評価も小さくなかったのではないか、と感じています。 私は昭和30年代後半に短歌を作り始めましたが、当時の短歌は占領期文化と第二芸術の影響が残っていて、まだ日蔭者の文芸でした。電車の中で歌集を読むのはどこかはばかられたことを覚えています。ですから短歌に関わろうとする若者には「この日蔭者の詩型になぜこだわるのか」という問いが否応なく課せられました。 短歌定型論や表現史論と取り組むなかで大切な転機となったのは啄木学会との出会いです。天理大学での平成11年秋の大会に参加したことを契機に入会、研究者との交流が始まりました。その中で学んだ皆さんの研究姿勢を以後の私は意識しており、とりわけ『啄木ーふるさとの空遠みかも』は随所に皆さんの成果が反映しています。ですから今回の受章は、啄木学会の後押しあっての受章と感じています。 啄木学会の一員としての私の役割の一つは、学会の研究成果を歌人たちに紹介、還元することと心得ています。どうか研究を通じて、これからも短歌の世界を支えて下さるよう、お願いいたします。 セミナーの席上でお祝いにいただいた岩手の銘酒はまだ封を切っていません。なにか自祝の折に楽しみたいと思います。学会への感謝とともに。(11/8/3)